全国初、イエナプラン教育実践校である福山市の公立小学校「常石ともに学園」について
イエナプラン教育をご存知ですか?
つい先日、このイエナプラン教育を実践している、福山市の”常石ともに学園”まで見学(視察)に行ってきました。以前からずーっと行きたいと思っていましたが、一般の公立学校のため、年に数回、視察日が指定されており、ようやく予約が取れたのが議会直前の11月20日だったのです。
(画像の挿入がなぜかできず、文章だけになります。残念)
議員が視察する際には必ず視察報告書を提出することになっていますが、以下は会派として提出した報告書です。
社会が非常に多様化している中で、日本の教育システムは100年以上同じ形式を続けています。そろそろ新しい学校のあり方を求めていくときではないでしょうか。不登校の児童生徒は、私が議員になった10年前は全国で12万人でしたが(これでも多くてびっくりしたものですが)、最新のデータでは34万人だそうで…
「学校がつまらない」という声が多いそうです。
本来、学校はワクワクするところであるのが望ましいと思います。
勉強は新しい発見があり、友達と共有する、一緒に発見する、子どもたちは新しいことが大好きなはずなのに。変革すべきところはたくさんあると思いますが、こういう学校を模索するのも一案では無いかと思います。今回の一般質問で取り上げる予定ですが、市教委はまだそこまでには至っていないので、まず今回は投げかけのみにしておきます。報告書の所感のところにも書きましたが、子どもたちがとても楽しそうに学んでいる姿が非常に印象的な学校でした。とても楽しく、こちらもワクワクするような時間でした。
ぜひ報告書をお読みください。
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常石ともに学園視察報告書 2024.11.20 政策実現フォーラム・社民
私たち政策実現フォーラム・社民は、全国で初めての、公立のイエナプラン教育実践校である、福山市の常石ともに学園を視察しました。不登校の児童生徒が増え続けていますが、これまでの学校の形以外に、多様な学び方や学ぶ場が必要ではないか。との考えからです。
イエナプラン教育は、ドイツで始まりオランダで広がった、一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶオープンモデルの教育です。ドイツにある「イエナ大学」のペーターセンという教育学者が提唱し実践していたことから「イエナプラン」と名付けられたそうです。
その後、オランダの新教育学会のフロイデンタールがイエナプランに共感し、オランダで広め、発祥地ドイツよりもオランダで多くのイエナプラン教育が実践されています。
日本では、2004年に教育研究者のリヒテルズ直子さんが紹介し、少しずつ広まってきました。以下、視察内容を報告します。
開始までの時間はともに学園の子どもたちが作成した動画を拝見しながら待ちました。様々なグループに分かれて、独自の調べ学習を動画にまとめているようでした。
1、常石ともに学園のイエナプラン教育とは
<目指す教育>
- 国 「個別最適な学び」
- 県 2019 個別最適な学び担当設置 イエナプラン教育導入研究
- 市 2016 福山100NEN教育 全面実施
3年の準備期間を経て イエナプラン学校ができた。
特徴 異年齢集団でのグループ編成 1〜3年 /4〜6年 3学年ごとに同じ教室で学ぶ。しかし、常石ともに学園は公立小学校なのでオランダのイエナプラン学校そのままではない。
<子ども主体の学び>
教えたり、助けたりが、日常的に行われるようになる。
学年を超えた学びの展開が可能になる。
<対話重視>
サークル対話と呼んでいる。チームごとの発表やクイズ(朝夕)
例えば、低学年の雨水グループのサークル対話の様子 溜まった雨水を観察、意見を出し合う。
<遊び>
遊びは学びである。
1日の教育に必ず遊びを取り入れる。
<仕事>(ブロックアワー「自立学習」)
自分で計画を立てる、自ら学び続けていく力を育む。
自分のペースで自立的に学ぶ。
友達と体験的、対話的に学ぶ。
自分の学びを振り返る。
<動画の中で教員がコメント>
「子どもたちがスラスラ音読できているから内容を理解しているとは限らない」
「読みたい、学びたい、という子どもたちにどう応えていくか」
「どう子どもたちに問うていくのか、が大事だと気づいた」
<異学年、他学年>
子どもなりの数え方をしている。
間違えていると周りから言うだけでは納得できない。
自分から分からないと。
答えを待ち、自分で発見していく。
<常石ウェザーチャンネル>
子どもたちが毎日天気を記録する。
作ったグラフから分析をしていく。すると、野菜の成長、天気、気温、雨量、湿度と
が非常に関係している、との分析を子どもたちが導く。
<常石パーク>
名所にしようとひまわりを植えたが、連作障害を起こしたようだ。そこで土に着目
して連作障害を克服。
<運動会>
コミュニティスクールのため地域と一緒に行う。「つねいし交流広場」と命名。
競技を作ることが目的になったこともあった。
今はみんなが楽しめる競技を考える。
オープニングは入場行進ではなく、各チームのパフォーマンス。
<サポーター>ボランティア制
学習サポート、つながりサポートなど、地域の住民や保護者が関わる仕組み。
<自立、共生、自己実現>
一般の不登校支援の居場所のように、自分の好きなことだけをしているわけでは
ない。
2、実際に校内を回る=見学
廊下から教室を見ると、全面的に大きな透明のガラス窓(木窓)となっている。
木質調の内観(OSBボード)の印象が感じ良い。
教壇は無いようだ。黒板も無し。いわゆる、私たちがイメージするような教室のスタイルはどこにもない。
普通の教室プロジェクターから映し出されたものを使って先生と対話する子ども、自分の机で自己学習をするこどももいるが、教室には3学年の子どもたちが学び合っている。
校長の話では、入学希望者は市内の子どもを中心に抽選となっているとのこと。それだけ、この学校への希望者が多いことが分かりました。
質疑応答
1、先生方の意識転換をどうやったか
→意識変革 授業中心に取り組んでいこうと。楽しくなる学び作り。自ら学び考える。毎月の校長・教頭研修。様々入れて9年かけた。年々充実してきている。
2、ワールドオリエンテーションで気をつけていることは
→異年齢よりも、教科横断的授業。何を子どもたちと探求していくか。子どもたちも、先生たちも、それぞれに、また、ともに共有している。
3、学びの転換をどうやったか
→期末テスト、単元テストは行っている。保護者面談を学期末に。ポートフォリオに集めていき、保護者に見せる。子ども自身が足りないところに気づき、学びたい思いを感じ、保護者は喜ぶようだ。
→総合の時間は学年横断的に学べる例、他の小学校にも影響している。
→評価の仕方に困るところがあるのでは?…数値を評価指標にしているため。
4、対話重視にするとカリキュラムに支障が出ないのか
→全てを対話にすることは無理、どこを重視するか、子どもたちの声を聞きながら取り組んでいく。
5、授業の始まり方は
→インストラクションに書いてあれば集まる時間。1日の流れが書いてある。
6、中学校に入ってからの問題、ギャップについて
→入学1年前に基盤作り。学びで小中をつないでいく。教職員研修を校内/校外で続けている。
単に教科で学んだだけでは子どもたちには残らない。
7、たくさんの本があるが英語の本が無い
→福山市全体の教育方針と同じ。学習指導要領に即している。
8、まちづくりとの関連は
→「常石ともにまちづくり運営委員会」成人した人が帰ってきてお祝いをする。今年は本校で行った。卒業生が次々と続いている。母校に愛着がある。
(ここで時間切れ)
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<所感>
常石ともに学園の説明の時間、子どもたちの動画が随所に紹介されました。子どもたちが先生に教えられている場面はほとんどなく、先生も「そうなんだ」「なるほど」と相槌をうっており、まさに、教えるというより子どもが主体で一緒に学んでいるよう。何より子どもたちがとても楽しそうに学んでいる様子が伺えました。
運動会(つねいし交流広場)も、一般的な音楽も競技風景もなく、オリジナリティあふれるもので、子どもたちが主体となって運営していることが伝わりました。
子どもの権利条約に日本が批准して、今年は30年となる年です。しかし、日本は国連子どもの権利委員会から今年5回目の勧告を受けています。体罰や差別の禁止、子どもの意見の尊重、少年司法、代替的養護(家庭での養育が困難な児童が新たに養育を受ける環境)などの問題。日本の学校制度の過度な競争が子どもの身体的および精神的健康に悪影響を及ぼす可能性(子どもの自死)、など、日本の子どもの権利保障は、まだまだ不十分だと指摘されています。
さて、松戸市においても、不登校の子どもたちのための公的な居場所や学ぶ場はとても少ない状況です。一方、20ほどの民間団体が市内で子どもたちを様々な形で支援していますが、その連携をもっと進めていくべきだと思います。
常盤平第一小学校の児童が減っています。この子どもたちの学びをどのように保障していけばいいか。一つの案として、10年後のイエナプラン学校を目指して研究を始めても良いのでは?と考えます。これだけ多様な社会において、100年以上変わっていない学校のスタイル、仕組みに合わない子どもがいても不思議ではありません。常盤平第一小を松戸イエナプランモデル校としていくことを検討してみてはいかがでしょうか。